一仕事終えた後のビールが美味しい季節になってきました。一方で、お酒を好む人の中にもビールに対し「太りやすい」「痛風の原因になりそう」などといった負のイメージをお持ちの方も少なくないかもしれません。



 しかし、適量さえ守れば、ビールは健康を守るとの学説も存在します。



 書籍『ビールは、本当は体にいいんです!』の著者・戸部廣康さんは、農学博士としてビールの原料であるホップの成分が体に対してどのような効果をもたらすかを研究。2010年に行われたイベント「イノベーション・ジャパン2010」で「ビールホップ成分イソフムロンの認知症治療への応用」との講演を行い、ビール会社をはじめ、さまざまな人々から反響を得たそうです。



 では具体的に、どのような効果を及ぼすのでしょうか?



 認知症の1つであるアルツハイマー病は、アミロイドβという物質が脳内に蓄積し神経細胞を破壊してしまうのが原因であるとされています。戸部さんは当初、このアミロイドβの作用を阻害する方法を考えていたそうですが、それではうまくいかず、次に神経細胞そのものを守る実験を行いました。その中で、ビール醸造によって生成される物質、イソフムロンをブタやウシの脳へ投与すると、脳細胞の破壊が止まったといいます。イソフムロンはほかにも、骨粗しょう症を予防する効果があり、またビールはワインと同様の抗酸化作用を持つことから、認知症以外の老化防止にも期待されるそうです。



 適量ならビールも薬になるということですが、ただアルコールに弱い人が無理をしてビールを飲む必要もありませんし、飲みすぎはかえって体を壊します。戸部さんは「そういう場合は、ホップ成分が多く含まれるノンアルコールビールを選ぶのもいいでしょう」(同書より)と語ります。



 最近ではノンアルコールビールも通常のビールと変わらない麦・ホップの風味が再現されているため、アルコールが苦手な人だけでなく、ビール好きからも人気が高まっているとか。また、飲むシーンも広がりつつあり、仕事中にノンアルコールビールの飲用を解禁し、リラックスした職場づくりを推進する企業もあるそう。



 実際、ノンアルコールビールを飲みながら打ち合わせを行っているという都内の法律事務所で話を聞いたところ、「コーヒーよりも気分が和らぐので打ち合わせが盛り上がることもある」「外部と会食する機会も多く、またクルマを運転して移動するので、ノンアルコールビールは助かる」と、その"効果"を口にします。



 ビールの意外な効能と、ノンアルコールビールの新たな活用法。まだまだ"国民的ドリンク"には、私たちの知らない力と可能性が秘められているようです。