「自転車に乗れない日が3日続くと、気分が悪くなる」



 この言葉を残したのは、2009年の5月2日に逝去した忌野清志郎さんです。清志郎さんは、生前、自転車をこよなく愛し、充実の"チャリライフ"を送っていました。



 本書『サイクリング・ブルース』は、そんな清志郎さんの自転車愛入門書。キューバや沖縄など国内外7つの自転車旅のフォトエッセイに加え、自転車アイテムの選び方など実用的な情報も網羅した1冊です。



 同書の中で、彼は独特の言い回しで自転車に対する愛情をこう表現しています。



"自転車はブルースだ。

 クルマや観光バスではわからない。

 走る道すべてにブルースがあふれている。

 楽しくて、つらくて、かっこいい。

 憂うつで陽気で踊り出したくなるようなリズム。

 子供にはわからない本物の言葉。

 ブルースにはすべての可能性がふくまれている。

 自転車はブルースだ。

 底抜けに明るく目的地まで運んでくれるぜ"



 正直、自転車愛好家でない人にとっては、ピンとこない内容かもしれませんが、清志郎さんの並々ならぬ自転車愛は伝わってきます。



 なお、彼が自転車に本格的に乗り始めたのは2001年のこと。「あるニュース」をきっかけに、自転車を使って無謀なチャレンジをしようと画策、以降、自転車に"どハマリ"することになったそうです。



 ちなみに「あるニュース」とは、雪山で雪崩に巻き込まれ遭難した息子を80歳の父親が吹雪の中、探索に向かい、自ら救出したという映画のような話。このニュースに感激した彼は、「そのような人間の秘めたる能力が自分にも備わっているか」を確かめるため、東京から鹿児島まで自転車で走破することを決め、実際に10日間かけ1000キロを走りきりました。



 その時に使用したのが「ピンキー号」と呼ばれるオーダーメイドの自転車。



 なんとこの"初号機"ともいえる貴重な自転車が、6月末まで、東京・南青山のライフクリエーションスペース『OVE』に展示されています。同店はオーガニック食材を使ったフード、ドリンクが売りのカフェ兼雑貨店。



 気になる方は、同店でおいしいオーガニックコーヒーでも飲みながら、ピンキー号に触れつつ、清志郎さんが語った「自転車はブルースだ」の意味について思いを馳せてみてはいかがでしょうか。





関連リンク

南青山OVE HP

http://www.ove-web.com/minamiAoyama/