ドラマ『半沢直樹』(TBS系)は、最終回の瞬間最高視聴率が50.4%を記録するほどの話題となりました。池井戸潤さんによる原作小説『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』も、累計250万部を超えるベストセラーとなっています。



池井戸さんの著作をはじめ、多くの人に愛読されているのが、先日惜しまれながらも亡くなった山崎豊子さんの『沈まぬ太陽』、NHKでドラマ化された真山仁さんの『ハゲタカ』などのビジネス小説。そこで交わされるやり取りを手本に、コミュニケーションスキルを学ぶのが書籍『ビジネス小説で学ぶ! 仕事コミュニケーションの技術』です。



本書の著者は、『声に出して読みたい日本語』などでおなじみの明治大学文学部教授・齋藤孝さん。紹介されているコミュニケーション理論は、実際にハーバード大学のMBAコースで教えられるものがベースとなっています。



例えば「タームと文型」の項で登場するのが、WOWOWでドラマ化もされた池井戸さんの小説『下町ロケット』です。



「『法律を逆手にとって、弱者から大事なものを巻き上げる。それが彼らの戦略なんですよ。あなたはいまそのターゲットになっていると思ってください』(『下町ロケット』)



この一節でも登場するように、会話の中で「戦略」や「ターゲット」などのビジネス用語を散りばめるのが、日本のビジネスマン。ビジネス用語には、会社員になるまで使うことのなかったような言葉も多いのが特徴です。



ビジネス用語を駆使することによって、一見"ビジネスパーソンの仲間入り"をしているように見える反面、その多用は「表面的な格好つけのテクニック」のように聞こえなくもありません。



しかし、斎藤先生はむしろこのようなビジネス用語やフレーズを使うことを推奨しています。なぜならば、これらの用語を用いることには、下記のようなメリットがあるからです。



■言葉に重みを持たせ、相手に信頼感を抱かせることができる

■"仕事コミュニケーション"を円滑にする

■言い方を身につけることで、ビジネス的な思考も身につけることができる



「ビジネスタームを用いたり、会話を基本文型に乗せる目的のひとつは、言葉に重みを持たせ、相手に信頼感を抱かせることにあるが、それ以上に、基本文型にのっとった言い方が身につくという点にある。つまり、仕事コミュニケーションを円滑にするだけでなく、言い方を身につけることで、ビジネス的な思考も身につけるということが真の狙いなのだ」



新しい職場や部署、プロジェクトに入った際には、そこで使われている言葉をどんどん吸収することで、その仕事に必要な考え方を身につけることができます。もっと言えば、憧れの上司や先輩の言葉づかいを真似するうちに、その人が普段どのように考え、仕事を行っているかが分かるようになるかもしれません。



齋藤さんは「『仕事がつらい』の9割は人間関係に起因する」と言います。ビジネス小説やドラマにコミュニケーションの技を学び、「9割」のストレスを改善できれば、仕事の充足感が劇的に変わりそうです。