イラスト/ウノ・カマキリ
イラスト/ウノ・カマキリ

 話がいささか脱線した。今、応援演説など、要人と国民が近い距離で触れ合うことが可能な選挙活動は危険ではないかという指摘も聞かれる。もちろん安全性は確保しなければならないが、私は変革の必要はないと考えている。

 国政に関わろうとする者と、彼らを評価し投票する国民との間の距離が広がってしまえば、民主主義の崩壊につながるのではないか。ただでさえ緊張感のない政治が続き、投票率も上がらず、政治への関心が薄れていると叫ばれる中、政治と国民の間に距離を置いてしまっては、政治家たちの“顔”も見えず、ますますその傾向が進むばかりである。

 もう一つ危惧することは、ローン・オフェンダーという言葉が一般に広がると、その言葉自体が何となく格好よく思えて、自分の欲求不満を解消するために、ローン・オフェンダーになりたい、つまり要人を殺害したいと思う若者が少なからず出てくるのではないか。極めて心配である。

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数

週刊朝日  2023年5月5-12日合併号

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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