文庫版『2050年のメディア』では、現在進行形の変化を描いた新章「新聞vs.プラットフォーマー」が加筆されている。
文庫版『2050年のメディア』では、現在進行形の変化を描いた新章「新聞vs.プラットフォーマー」が加筆されている。

 このコラムのタイトル『2050年のメディア』は、2019年10月に刊行された単行本からとっている。その文庫版が文藝春秋より刊行された。

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 この文庫版には、400字×70枚の書き下ろしの新章「新聞vs.プラットフォーマー」が加わっている。

 インターネットの登場で何がかわったかと言えば、メディアのゲートキーパーともいうべきプラットフォーマーが成立していったことだ。グーグルやフェイスブック、アップルなどはそれぞれプラットフォーマーになることで、競争他社を淘汰し、独占的地位を確立していった。

 日本では1996年に創業したヤフーということになるだろう。これがいかに巨大な存在かということは、月間のPV数を見ればたちどころに了解できる。そのPV数は200億PV以上。ニュースサイトで言えば話題になっている文春オンラインでも、最新の数字で3億7000万PVだから、いかに多くの人々がヤフーに集まっているかがわかるだろう。

 そうした吸引力のあるサイトには、ニュース配信料が安くとも報道機関はコンテンツを出したがる。現在300媒体以上が、ヤフーにニュースを提供している。

 むろん、一朝一夕にそうした存在になったわけではない。1990年代後半には住友商事のやっていたライコスやNTTが始めたグーなどの大手が始めたサイトが乱立しており、当時1000億円程度の売上しかなかったソフトバンクの始めたヤフーは、そのうちのひとつにすぎなかった。それが他社を引き離しプラットフォーマーに成長していくのに、8本の旬のニュースを次々に掲示していくヤフーニューストピックス(ヤフトピ)が大きな力を持ったことは論をまたない。

 そしていったんプラットフォーマーが成立すると新規参入は容易にしづらい状況になる。

 次の新しい技術革新があるまでは──。

 その技術革新は、2010年に始まった4Gと呼ばれる第四世代の通信規格だった。これによって動画や音楽が、無線で瞬時に送れるようになった。そうするとPCから、スマートフォンへの人々の移行が始まる。2010年には9.7パーセントだったスマートフォンの普及率は、2017年には75パーセントに達する。

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下山進

下山進

1993年コロンビア大学ジャーナリズム・スクール国際報道上級課程修了。文藝春秋で長くノンフィクションの編集者をつとめた。聖心女子大学現代教養学部非常勤講師。2018年より、慶應義塾大学総合政策学部特別招聘教授として「2050年のメディア」をテーマにした調査型の講座を開講、その調査の成果を翌年『2050年のメディア』(文藝春秋、2019年)として上梓した。著書に『アメリカ・ジャーナリズム』(丸善、1995年)、『勝負の分かれ目』(KADOKAWA、2002年)、『アルツハイマー征服』(KADOKAWA、2021年)、『2050年のジャーナリスト』(毎日新聞出版、2021年)。元上智大新聞学科非常勤講師。

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