東尾修
東尾修

 西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修さんは、巨人の主力・坂本勇人を心配する。

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 プロ野球は開幕から2カードで全勝、全敗のチームがなくなった。特に新監督の新井貴浩(広島)、松井稼頭央(西武)、吉井理人(ロッテ)の3氏は、早く1勝したいと思っていただろう。負けが込むと、監督がいくら平常心で臨もうとも、選手が意識してしまう。その意味で、全チームが早い段階で1勝できたことは良かった。このまま序盤で脱落するようなチームがなく、いってもらいたい。

 3月の第5回WBCで3大会ぶりの世界一となった侍ジャパンの投手陣が絶好のスタートを切ったことにひとまず安心した。栗山英樹監督が極力、イニング数、球数といったものに配慮し、ほぼすべての投手を使ったとはいえ、「世界一の代償」といったものがなければいいなと思っていた。帰国後、しっかりと休養をとらせ、開幕カードではなく、2カード目から登板させた各球団の起用もあるだろう。時代は確実に変わっている。

 開幕から10試合で大きなつまずきがないことだけを気にすれば、勝ったり負けたりで問題はない。ただ、チームに重要な役割を担ってもらっている主力の状態だけは、どの監督も気にしているはずだ。そこに穴ができてしまうと、シーズンを戦いながら埋めようとしても埋められない状況もあるからだ。

 気がかりなのは巨人の坂本勇人だ。開幕から4試合連続ノーヒットで、4月5日のDeNA戦は欠場。6日の同戦で復帰したが、この試合で19打席連続ノーヒットとなった。34歳。選手によって差があるにせよ、30歳代中盤になれば、どこかで感覚が狂うところは出てくる。過酷な遊撃というポジションで、ここから数年先までプレーできるかどうか、ここが頑張りどころであるのは、誰もがわかっていると思う。

 坂本が巨人の中で果たしてきた役割は大きい。主将こそ岡本和真に渡したが、チームの支柱であることに変わりはない。この穴を完全に埋められる選手などいない。ドラフト4位ルーキーの門脇誠が元気だが、すぐにレギュラー交代というわけにはいかないだろう。たとえ門脇を軸にするにせよ、ここから130試合ほどのすべてを任せられるわけではない。必ず坂本の力が必要な時はある。

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東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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