マーケットの高齢化は若い消費者の減少でもある。自動車や住宅といった「大きな買い物」をし始める30代前半の人口は今後30年で3割ほど減少する。倒産や廃業する企業が続出するだろう。

 すでに“ダブルの縮小”に備える動きは始まっている。ファミリーレストランやコンビニエンスストアの24時間営業の見直しや、鉄道会社の終電時間の繰り上げや運行本数の削減などだ。これらはコロナ禍による一時的な需要減少への対応ではなく、かねて進められてきたことだ。

 だが、これらの取り組みはほんの一部であり、大半の企業はいまだに売上高の拡大にまい進している。目の前の顧客ニーズに応えざるを得ない事情もあるだろうが、拡大路線を続ければその分だけ行き詰まりは早くなる。

 影響は行政も例外ではない。市役所や町村役場は45年には必要とする職員数の8割程度しか確保できなくなるとの民間シンクタンクの推計もある。警察官や自衛官、消防士といった「若い力」を必要とする職種で必要な体制が維持できなくなれば日本が誇る安全神話は崩壊する。

 勤労世代は20年から40年までに約1400万人少なくなる。すべての業種で人手不足が拡大するだろう。「20歳人口」は20年後には約3割少なくなる。これでは新規学卒者の採用も困難となり、大企業でも求める人材を十分獲得できないところが出てこよう。

 さらには年功序列による人事制度を崩壊に向かわせる。退職する人と同規模かそれ以上の新人が入ってくることを前提としているためだ。人手不足を定年延長や再雇用の拡大で補う企業が増えてきたが、年功序列の人事制度を残したままでは賃金の上昇カーブを全体として抑え込まざるを得ない。ポストがなかなか空かず昇給ペースも遅くては、若い世代に閉塞感が広がる。結果として転職者が増えれば、終身雇用も終わりを迎える。

 すべての分野で人手が足りなくなる人口減少社会では、必然的に雇用の流動化が進む。そうでなくともデジタル技術が急速に進歩・普及し、かつてのように「勤務年数の長さ=職能の高さ」とは言えなくなった。勤務年数を過度に重視する人事制度は続きようがない。

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