岸田文雄首相
岸田文雄首相

 すでに80億人を突破したとされる世界の人口は今後も増え続け、2058年に100億人に到達する。一方、日本は人口縮小が止まらず、経済活動の維持が困難に……生き延びるにはどうすればいいのか。ジャーナリスト・河合雅司さんが綴る。

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 政府の予想を上回る勢いで人口減少が進んでいる。大きな話題とならなかったが、出生数は2019年に前年比5.8%ものマイナスを記録するなど、コロナ禍前から急落傾向を示していた。感染拡大の影響でさらに落ち込み22年は80万人割れが確実だ。出生数の先行指標とも言える婚姻件数も下落しており、急落傾向は23年以降も続きそうである。国立社会保障・人口問題研究所は総人口1億人割れを53年と推計しているが、かなりの前倒しが予想される。

 こうした事態を受けて岸田政権は子育て支援策の強化を打ち出した。だが、これまでの出生数減によって子供を産める年齢の女性数が激減していくという「不都合な未来」は変えようがない。

 厚生労働省によれば、21年に誕生した子供の母親の年齢の85.8%が25~39歳である。総務省の人口推計(同年10月1日現在)でこの年齢の女性数を確認すると943万6千人だ。これに対し25年後にこの年齢となる「0~14歳」は710万5千人で24.7%も少ない。

 短期間にここまで「少母化」が進んだのでは、出生率が多少上昇しても出生数は減り続ける。これから対策を講じても、出生数が減るスピードを多少遅くすることぐらいしかできないのだ。もちろん、いまの日本にとってはそれだけでも大きな意味はある。

 人口減少が社会経済に及ぼす影響は大きい。国内マーケットの縮小と勤労世代(20~64歳)の減少が同時に進む。しかも、マーケットの縮小は実人口の減少にとどまらない。高齢化率は伸び続けるため、30年代半ばまでに消費者の3人に1人は高齢者となるためだ。

 高齢になると多くの人は現役時代のようには収入が得られず節約に走りがちとなり、若い頃のように消費しなくなる。今後の国内マーケットは一人あたりの消費量が減りながら消費者数も少なくなるという“ダブルの縮小”に見舞われるのだ。

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