※写真はイメージです (Getty Images)
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 親のためにも子どものためにも、いつかは必ず着手せねばならない実家の片付け。しかし考えなしに手をつけると、親と揉めたりトラブルが発生したりと、意外な落とし穴も多い。失敗しない実家の片付けとは。短期連載でお伝えする。

【図表】実家の片付けがうまく進まなくなる。親に言ってはいけない13のNGワード

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「散らかった実家を片付けたいけれど、いったい何から手をつけていいのやら……」

 実家から車で1時間ほどの場所で夫と暮らす、千葉県在住のスミエさん(58)。目下の悩みのタネが、80歳(父)と77歳(母)の両親が暮らす実家の片付けだ。両親はそれぞれ、高齢なりの身体の不調を抱えてはいるものの、自宅で元気に暮らしていた。

 ところが昨秋から、父の持病が悪化し、入退院を繰り返す日々がスタート。時を同じくして認知症の症状も見られ始め、スミエさんは「施設に入ってもらう日も、そう遠くないかもしれない」と考え始めている。

 そうなってくると途端に気がかりになるのが、実家の今後についてだ。もし父が施設に入ったら、母が一人で実家に住むことになるが、母は「寂しいし、一人でいるのも不安だから、私もどこかの施設に入ろうかしら」とこぼしている。スミエさん宅で母を引き取ることも考えてはいるが、「“お荷物”になるより、施設で同世代と交流できたほうが楽しそう」というのが母の考えだ。

 ならば、実家の今後は──。実家はとにかく物が多く、探し物を見つけるのも一苦労な状態。廊下や階段にも、物がぎっしりと積み上げられ、通路をすり抜けるのにもコツがいる。荷物置き場と化した部屋が3部屋もあり、中を見るのも恐ろしいのが本音だ。両親には再三、「危険だから片付けたほうがいい」「物を捨てよう」と促してきたが、聞く耳を持たぬままここまできてしまった。

「両親の状態や年齢を考えたら、私が手伝って何とか片付けるしかない。少なくとも母が実家にいるうちに……」(スミエさん)

 高齢化が進み、終活や空き家問題などが取り沙汰されて久しい今、スミエさんのように実家の片付けに悩む人が増えている。断捨離や片付けがブームになっている時代だが、同じ「片付け」であっても、自分の家と実家とは、進め方や取り組み方が大きく変わってくる。

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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