西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)さん。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「調和道丹田呼吸法」。

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【みずおち】ポイント

(1)丹田呼吸法の第一歩は三呼一吸法のマスターにある

(2)みずおちの下がへこみ下腹が膨らむ上虚下実を目指す

(3)丹田呼吸法は誰でもできる。是非、皆さんもお試しを

 先日、白隠禅師の呼吸法について書きました。今回は、その流れをくむ調和道丹田呼吸法を紹介します。この呼吸法は調和道協会の創始者である藤田霊斎先生が体系化したもので、白隠禅師が説いた「内観の法」の精神が引き継がれています。ちなみに調和道協会の2代目会長は『万病を癒す丹田呼吸法』(春秋社)の著書がある村木弘昌先生で、3代目会長は私が務めさせていただきました。

 この呼吸法は、吐く息に心をこめる「呼主吸従」になっています。この吐く息を重視するというのは、これまでにも何度か書きましたが、交感神経が優位になりがちな現代人には大事なことです。息をしっかり吐くことで、副交感神経を高めることができるからです。

 丹田呼吸法の第一歩は「三呼一吸法」のマスターにあります。文字通り、3回吐いて、1回吸うのです。擬音語で表すなら「ハッ、ハッ、ハッ、フウー」。まさに「呼主吸従」の呼吸です。

 これを日常的に実践されていたのが、村木弘昌先生でした。調和道協会でお会いして、帰りに一緒に一杯やったときなど、村木先生は徒歩でご自宅に、私はタクシーで病院に帰るのですが、徒歩の先生を私のタクシーが追い抜くと、必ず先生はハッ、ハッ、ハッ、フウー、ハッ、ハッ、ハッ、フウーと三呼一吸で歩いていらっしゃるのです。

 白隠禅師の「内観の法」では、臍輪(ヘソ)、気海(下腹のツボ)、丹田(下腹)、腰脚(腰と脚)、足心(土踏まず)に呼気を漲らせていきます。これを重ねて行うことで、みずおちの下がへこんで、下腹が膨らみます。この状態を藤田霊斎先生は「上虚下実」と名付けました。調和道丹田呼吸法でもこの上虚下実を目指します。しかし、実際にはみずおちの下と下腹を意識するとむずかしくなります。もっと大らかに、吐く息とともに下半身に力を漲らせれば、十分です。この上虚下実という言葉は現在では、太極拳、気功などでも広く使われています。そこでは上半身の力が抜けて、下半身に力が漲った状態を示すようになっています。

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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