シーナ&ロケッツは昨年5月から結成45周年を迎える全国ツアーを行っていた。今年1月8日まで全47公演というハードスケジュールの中、病についてほぼ誰にも知らせず病と闘いながらステージに立ち続け、シナロケとしては12月4日のステージが最後となった。

「6月のセッションも万全の体調ではなかったかもしれませんが、みじんもそんな素振りは見せなかった。鮎川さんは最後まで何も変えず、一本でも多くライブをしようと考えていたのでは。その覚悟を思うと、ただただかっこいい」(同)

 このセッション直後、記者は鮎川さんに取材している。楽曲のギターソロ部分をスキップして聴く昨今の風潮について感想を尋ねると、ギタリストとしては不本意なはずなのに「どんなきっかけでもいい、いい音楽にどんどん出会ってほしい」と肯定的に語ってくれた。この日の取材、鮎川さんは当初、断るつもりだったのだと後日聞いた。「伝えておこうと思うことがあったのかもしれません」(石澤さん)

 鮎川さんは取材後、「ありがとね」と笑顔で握手をしてくれた。その大きな手の感触、温かさ、そしてサングラスの奥のやさしい瞳の記憶は永遠に残る。(本誌・太田サトル)

週刊朝日  2023年2月17日号