西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)さん。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「白隠禅師の呼吸法」。

*  *  *

【逆腹式】ポイント

(1)白隠禅師が説いた呼吸法が養生法のなかでもピカイチ

(2)上から下に、自分の息を下ろして気を充たしていく

(3)呼気でヘソの下が膨らむ禅師の呼吸法は逆腹式呼吸

 これまでに何度か書きましたが、私は臨済宗の中興の祖、白隠禅師が説いた呼吸法が古今東西の数ある養生法のなかでもピカイチだと思っています。禅師が松蔭寺の住職になって40年、そのもとで修行するために多くの僧たちが集まってきましたが、その修行はとても過酷なもので、肺を病んでしまうなど重病に陥る者が少なくなかったといいます。そうした僧たちに養生法として授けたのが、「内観の法」とも「仙人還丹(げんたん)の秘訣」とも呼ばれる禅師の呼吸法だったのです。

 禅師の法語である『夜船閑話』の序文には、禅師はこの呼吸法を次のように教示したと書かれています(以下は意訳)。

「まず(仰臥して)眼をつむって、しかも睡り込まないで、両脚を強く踏みそろえるように長く伸ばして、体中の元気をして臍輪、気海、丹田、腰脚、そして足心に充たすようにする」(『夜船閑話』訳注・芳澤勝弘、禅文化研究所発行)

 そして、この気海丹田が浄土である、この気海丹田が阿弥陀仏であるなどと繰り返し観想する。

「繰り返し繰り返し観想していくならば、やがて、一身の元気はいつしか腰脚足心に充足して、臍の下が瓢箪のようにふくらみ、皮で作った硬い蹴鞠のようになる。このような観想を1週間ないし3週間続けるならば、それまでの五臓六腑の気の滞りや、心気の衰えのための冷や汗、疲れといった症状はすっかり治るであろう。もし治らなければ、老僧(わし)の首をやってもよろしい」(同)

著者プロフィールを見る
帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

帯津良一の記事一覧はこちら
次のページ