「マクベス」には、「綺麗は汚い/汚いは綺麗」という有名なセリフがある。そのセリフもまた、早乙女さんにとっては、人間の多面性を表す言葉に聞こえるそうだ。

「結局、人間誰しもものすごく汚い部分と綺麗な部分の両方を持っていて、この作品は、天使と悪魔が同居している人間が、何を選んでいってどう生きていくかを描いているんですよね。自分のような知識の浅い一役者がこんなことを言うのはおこがましいんですが、『マクベス』が長きにわたって世界中で演じ続けられているのは、人間の綺麗な部分と汚い部分を見たい人がいて、作りたい人がいるっていうことなんじゃないのかなって」

 綺麗とか汚いという言葉で二極化はできないが、早乙女さんの中にも、作品に向かう恐怖と歓喜という両極端なものが存在していて、そこがとても魅力的に感じられた。

(菊地陽子、構成/長沢明)

週刊朝日  2023年1月27日号より抜粋