<「あみですくったり、手でふれたりしただけでウロコが取れて死んでしまうんです」。そう言えばお店のサンマにはウロコがない。>

 生きたサンマがいつも見られるのは世界中でここだけのため、同館の人気はかなり高いという。

「メディアが珍奇なものに走っているときに、サンマのように普通なものからでもこうやって宝石みたいな記事になる。記者冥利(みょうり)に尽きますよね」

 取材先に何度も訊ねた言葉がある。「動物園は何のためにあるのでしょうか?」。同じ職種に就いていても「ないほうがいい」という人もいて、答えは様々。呼称ひとつにしても「飼育係」か「飼育員」か、これには園の歴史が深く関与していることも綴られる。本書にはへぇー、ほほぉうが詰まっている。(朝山実)

週刊朝日  2023年1月27日号