ハッピーダイニングでえさを食べる猫
ハッピーダイニングでえさを食べる猫

 の食器は業界の盲点だった――!? 猫壱(東京都新宿区、社員数9人)のボウル型食器「ハッピーダイニング」が売れに売れている。2014年の発売以来、販売個数はシリーズ累計で200万個を突破。とくにここ数年は爆発的人気を博し、社全体の売り上げは15年(約2億円)から21年(約21億円)にかけて10倍に伸びている。

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 ハッピーダイニングは、陶器の脚付きボウル型食器。フード用、水用に大別される。フード用には「レギュラー」(直径11センチ、高さ7・5センチ)、「ラージ」(同12・4センチ、10センチ)をはじめ、子猫用の「プチ」や皿部分を傾けた「斜め」などをそろえ、カラーバリエーションも含めるとシリーズは約40種にのぼる。

 先見の明があったのだろう。ユニ・チャームの社員だった竹内淳社長(44)が、同社でのマーケティング経験を生かして猫に特化した社を創業したのは08年。ペット用品の市場は今より小さく、猫よりも犬が主流だった。

 竹内社長は「米国では00年以降、猫の市場が伸びていて、日本も追随すると思った。同時に国内の競合他社の猫の商品力はさほど強くないと感じた」と振り返る。だが当初は、キャットタワーや猫用玩具を製品化してもバイヤーから相手にされず、「猫じゃなくて、犬の商品はないの?」と言われ、苦戦が続いた。

 改めて猫や市場を研究し、目にとまったのが食器だ。「メーカーは犬用につくった食器を猫用として売る程度。猫の体形や行動特性にあわせた商品はなかった。そこに商機を見いだした」。愛猫家の意見も参考にし、実用性とデザインにこだわって開発したのが、ハッピーダイニングだった。「低い皿だと、猫が食べるときに食道が折れ曲がり、吐き戻しを招く。試作を重ね、食器の高さは7・5センチが理想的だと判断しました」。食器の縁には「かえし」をつけ、すくいやすく、こぼしにくくした。底には滑り止めのシリコーンを装備。「猫って、立ち姿もしぐさも表情も魅力的ですよね。その美しさを生活空間で引き立たせるため、白を基調にシンプルなデザインにしました」

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米国、中国、台湾でも展開