西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)さん。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「私の人生を変えた本」。

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【白隠禅師】ポイント

(1)私の人生に最も影響を与えたのは白隠禅師の本

(2)まずは呼吸法、そして「虚空と一体になれ」との教え

(3)「延命十句観音経」と白隠さんの逸話にも惹かれた

 先日、この欄で「本を読みたいと思わなくなってしまった」と書いたところ(10月28日号)、反響がありました。出版関係の知人には「先生、本は死ぬまで読んでくれないと困りますよ」と言われてしまいましたし、どうも不評でした。確かに本を読む人が減って、出版業界が苦しくなっているときに、余分なことを言ってしまいました。私も本の大事さは、重々、承知しているのです。

 で、今回は私の人生を変えた本について書きたいと思います。

 私の人生に影響を与えた本はたくさんあるのですが、あえてひとつ選ぶとすると、臨済宗中興の祖、白隠禅師に関する本です。いろいろある師の本のなかで『白隠禅師‐健康法と逸話』(直木公彦著、日本教文社)がおすすめです。この本は1955年の初版以来、67年にわたってのロングセラーで、白隠禅師を知るのに欠かせない本です。

 私と白隠さん(以降、親しみを込めてこう呼びます)との出会いは、調和道協会での講話でした。都立駒込病院に勤務していた頃、呼吸法を学ぶために調和道協会に通っていました。実修とは別に、当時の会長、村木弘昌先生の講話があり、そこによく登場するのが白隠さんだったのです。それをきっかけに、彼の本を読み漁りました。そして読めば読むほど、私の人生に大きな影響を及ぼすことになったのです。

 まず第一は白隠さんの迫力ある呼吸法です。この呼吸法は、古今東西の数ある養生のなかでもピカイチだと思います。これを知ったおかげで、呼吸法の真髄を身につけることができました。それによって、気功も太極拳も、その真価がわかるようになったのです。

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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