ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、「サッカーW杯」について。

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 中東カタールでの開催だったため、北半球住民にとってはイレギュラーな冬のサッカーW杯。そもそも私の「スポーツ体内時計」は夏季オリンピックを基準に設定されているため、「冬季五輪とサッカーW杯」は夏季五輪の2年後、「ラグビーW杯」は夏季五輪の3年後または1年前と私の中では位置づけられています。しかし、2020年の東京夏季五輪が1年延期して以降、完全にその時計が狂ってしまいました。事実、今回のサッカーW杯も、開会2週間前に知ったほど。

 45歳を過ぎたぐらいから、それまでは自然に体内に刻まれていた世間の風物詩に対する感覚が一気に鈍ってしまった。スポーツはもとより、アメリカの予備選挙、自宅マンションの更新。毎年恒例の美川憲一さんのコンサートも2年連続で失念する始末。とりあえず今はすべてコロナのせいにしていますが、このまま世捨て人になるのか、23年以降は再び感覚を取り戻すべく努めるのか、ちょっと悩ましい年末です。

 それはそうと、サッカー日本代表は強豪を次々となぎ倒し、2大会連続で決勝トーナメントに勝ち進み、今大会も大いに盛り上がった。そのような認識でいますが間違っていないでしょうか? ドイツ戦もスペイン戦も、この原稿を書いている夜中にずっと音を消して背後で流れていました。クロアチア戦も一応テレビは点けていたので、個人的には十分W杯を満喫したつもりでいます。ゲイのスポーツ観戦は、9割が「イケる男探し」が醍醐味です。結果や試合の善し悪しは二の次。きっと師走の新宿2丁目でも、やれ「堂安カワイイ!」「三笘と付き合いたい!」「田中碧に貢ぎたい!」「長友に噛まれたい!」などと、あちこちで不毛な妄想話が繰り広げられていることと思われます。

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ミッツ・マングローブ

ミッツ・マングローブ

ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する

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