自宅でも2匹のネコと暮らす高木さん
自宅でも2匹のネコと暮らす高木さん

 まず飼い方が変わった。ひと昔前は放し飼いが普通で、ネコによっては複数の飼い主がいる個体もあった。しかし現在、ネコは外に出さず、家の中だけで飼うように勧められる。

 血統書付きのネコが増え、ネコの種類が確立し始めている点も大きな変化だ。昔は戸外で自由恋愛をしていたネコの繁殖に、人がかかわるようになった。ギンギツネをイヌ化させる研究と同様、おとなしいネコ同士をかけ合わせると、おそらくはおとなしいネコが生まれる──。

「家の中で家族と一緒に過ごすネコは、飼い主が見当たらないと不安そうな様子を見せることがあります。また、血統書付きのネコの多くは人にフレンドリーになっているなと実感しています。野良ネコを減らす流れがこのまま加速すれば、ネコもブリーダーやペットショップから購入する傾向が進むでしょう。こうしたネコをめぐる環境の変化が、“イヌ化”をさらに進めていく可能性があると思っています」

 高木さんによると、ネコの「ニャァ~」という鳴き声や喉(のど)を「ゴロゴロ」と鳴らす行為は、もともとは子ネコが母ネコに助けを求めたり、甘えたりするときの声。それを現在は飼い主に対してしていることも「イヌ化」への変化の一つではないかとみている。

 実験をする際、高木さんは必ず自宅やネコカフェに実験装置を運んで行う。実験室でするより手間も時間もかかるが、ネコに不安を感じさせないためだという。

「“ウチの子は人見知りで”と心配する飼い主さんは多いですが、私はいつも飼い主さんから“普段は家族以外の人の前には出てこないのに”と驚かれます(笑)。実はネコと仲良くなる方法があるんです。まず『余計なことをしない』。そして『無駄な動きをしない』。そうすればネコちゃん側からこちらに寄ってくるんです。こちらの都合ではなく、ネコの都合に合わせてあげることが大切です」

(本誌・鈴木裕也)

週刊朝日  2022年12月23日号(2023カレンダー付き)