本誌の取材に答える田中秀征氏(撮影=写真映像部・加藤夏子)田中秀征(たなかしゅうせい)/ 長野県出身。1983年に衆院初当選。経済企画庁長官、内閣総理大臣特別補佐、新党さきがけ代表代行などを歴任。現在は福山大学経済学部客員教授
本誌の取材に答える田中秀征氏(撮影=写真映像部・加藤夏子)田中秀征(たなかしゅうせい)/ 長野県出身。1983年に衆院初当選。経済企画庁長官、内閣総理大臣特別補佐、新党さきがけ代表代行などを歴任。現在は福山大学経済学部客員教授

 支持率低迷から抜け出せない岸田文雄政権。同じ宏池会出身で、宮沢喜一元首相の側近として活躍した田中秀征元衆院議員(82)は、政権の現状には多くの問題点があると指摘する。満身創痍の首相に、大先輩からの「辛口エール」を送る。

【写真】田中秀征氏が支持した宏池会出身の元首相はこちら

*  *  *

──岸田内閣の支持率低迷が続いています。岸田首相を支持しますか。

 条件付きで支持します。岸田首相は私が師事した宮沢喜一元首相と同じ広島出身。宮沢氏は、池田勇人元首相が立ち上げた政策集団・宏池会の創設当初から、思想や理念の構築を主導しました。宮沢氏には譲れない線があった。(1)憲法の尊重、(2)歴史認識、(3)言論の自由、(4)軍事大国にならない──の4点です。だから、宏池会は自民党の派閥にしては明確な思想を持っている。岸田首相はその弟子を自任していますから、その点で応援したい気持ちがあります。

──岸田氏は、久々の宏池会出身首相ですね。

 2000年の「加藤の乱」から、岸信介元首相を源流とする清和会が政治を主導する時代が長く続いた。自民党の裏表がひっくり返った状態でしたが、久しぶりに元に戻ったかたちです。私が岸田首相を支持するのは、“いけいけドンドン”ではない点。性格的に温かさとやさしさを併せ持っているのは最高指導者として大切なこと。憎しみや冷酷さを秘めている指導者が世界に増えている中、ある意味、真っ当さを持っている。

 私の友人が日本長期信用銀行(現・新生銀行)の人事課長だったんですが、彼が「岸田文武衆院議員(岸田首相の父)の息子さんの面接をした」と言うので、どんな人かと聞いたら、「真っ当な人だよ、悪いことはしないでしょう」と。最近、会った時も「真っ当さは変わっていない」と言っていた。警察や検察を固めて権力を振るうようなことはしないだろうと。

──「条件付きで支持」ということは、問題点もあるということですね。

 判断力、決断力が物足りない。欠点のない政治家はいないから、足りない部分を補佐する周辺が必要です。息子を首相秘書官にしたことは大きな間違いですね。息子の意見を聞きたければ一緒に夕飯を食べていればいい。跡継ぎのキャリアを積ませるためとしか見えない。支持率がこれだけで5%は落ちている。

次のページ