来日時のエリザベス女王(中央)
来日時のエリザベス女王(中央)

 その後、庶民の居酒屋「パブ」に初めて足を運び、結婚50周年の祝賀行事には同じ金婚式を迎えた夫婦を招待して、ガーデンパーティーを楽しんだ。積極的にSNSを活用し、国民との距離を縮める努力も惜しまなかった。元妃の親しみやすさを取り入れ、圧倒的人気の秘密を学ぼうとしました。開かれた王室をめざす姿は、国民に受け入れられていきました。

 次男アンドルー王子はフォークランド紛争の英雄で、女王のお気に入りでした。それが、未成年女性の性虐待疑惑が持ち上がり、訴えた女性に多額の金銭を渡したといわれます。女王はそれでも彼を見捨てず、新たな生き方を探ってやった。

 孫のハリー王子とメーガン妃も悩みの種でした。2人が王室を離脱したあと、インタビューや暴露本で、王室内の人種差別や王族の冷淡さを米国のメディアに打ち明けました。メーガン妃を精いっぱい歓迎した女王としては、いたたまれなかったでしょう。それでも「2人は家族ですから」と許しの姿勢を崩さなかった。いまも王室でトラブルが起きると、ふと思います。「女王ならどう切り抜けただろうか」と。

週刊朝日  2022年12月16日号

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多賀幹子

多賀幹子

お茶の水女子大学文教育学部卒業。東京都生まれ。企業広報誌の編集長を経てジャーナリストに。女性、教育、王室などをテーマに取材。執筆活動のほか、テレビ出演、講演活動などを行う。著書に『英国女王が伝授する70歳からの品格』『親たちの暴走』など

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