賃金改善などを求める米国の労働者のストライキ(2021年)
賃金改善などを求める米国の労働者のストライキ(2021年)

 そして、今また、国民を馬鹿にした政治が行われている。防衛費の中身も財源も決まらないまま、総額を2倍にするという話だけが先に決まった。国民の批判を避けるために、とりあえずは国債でと言うが、将来の増税は事実上決まっている。ただでさえ増え続ける税・社会保険料負担に喘いでいる国民をどこまで馬鹿にするのだろうと思う。だが、国民は声を上げる気配すらない。

 欧米諸国やお隣韓国などでは、物価上昇に賃上げが追い付かないことへの労働者の反発が高まり、ストライキが頻発している。他方、日本では、ストという話はほとんど聞かない。政府も経団連も、常に賃上げしようと掛け声をかけ、労働者にやさしい善人を装っているが、内心は、本気で声を上げない労働者を馬鹿にしているようだ。

 この国では、国民はどこまでもおとなしい。ここまで窮乏生活を強いられ、馬鹿にされ続けても、なお、黙ったままだ。「窮鼠を噛む」というが、どこまで窮すれば立ち上がり、猫を噛むのか。その時が来るまで、この国はひたすら破たんへの道を進むしかないのだが。



週刊朝日  2022年12月23日号

著者プロフィールを見る
古賀茂明

古賀茂明

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

古賀茂明の記事一覧はこちら