週刊朝日 2022年12月16日号より
週刊朝日 2022年12月16日号より

 僕は一生さんから服をたくさんいただき、普段からよく着ています。一生さんの服は気分と肉体が一体化し、さらに都市や自然と融合していくような感じがするミステリアスな魅力があります。

 一生さんは「一枚の布」という考えで服を創っていて、日本の折り紙の原理を利用しています。人間が服を着るというより、「一枚の布」に包まれるようで、肉体そのものが芸術表現となり、芸術そのものになる。だから着ることで「ISSEY」体験ができるのです。一生さんの服を通じて、社会、世界、そして他の文化や芸術などを自分で感じ取ることができる、そういう力を持っているのです。

 一生さんとは、個人的に会ったときに芸術の話をしたことはありません。そんなことしなくても、お互いの創造行為は通じあっていました。一生さんは海外に行ったとき、写真集や画集を贈ってくれました。自分の感性を自分ひとりで感受するのではなく、僕に贈ることで、その本を共有したかったのです。そういう友情の表し方です。そのようにして会話を交わしていました。そんな友だちは他にはいないですね。

週刊朝日  2022年12月16日号