世界平和統一家庭連合の勅使河原秀行・教会改革推進本部長
世界平和統一家庭連合の勅使河原秀行・教会改革推進本部長

 政治アナリストの伊藤惇夫氏は、今後の展開について厳しい見方を示す。

岸田首相としては予算委初日の直前に質問権行使を指示して、国会対策、世論対策として切り札を切ったと思ったはず。しかし、その後、解散命令の請求要件をめぐる岸田首相の答弁が迷走し、山際大臣にまたも教団との接点が発覚。切り札の効果は打ち消された。もし、解散命令までいかなかったら、教団の存続に政府がお墨付きを与えてしまうことになりかねない。岸田首相はルビコン川を渡ってしまったのです」

 長年、教団の問題を取材してきたジャーナリストの有田芳生前参院議員もこう語る。

「幾度も問題を指摘されながら50年以上にわたって巧妙に生き残ってきた旧統一教会の歴史を知らずして、的確な質問ができるとは思えない。『収益事業は行っていない』などといった教団の主張を覆すだけの証拠が出せるかどうか。警視庁、警察庁が資料を持っているので、警察当局との連携がなければいけません」

■目立つ拙速さは焦りの表れか?

 よもや“自滅”に終わることはないと思いたいが、最近の岸田政権の動きを見ると心配になる。

 10月13日には、河野デジタル相が岸田首相との面会後の会見で、現在の健康保険証を2024年秋に廃止し、「マイナ保険証」としてマイナンバーカードに統一する方針を突如、打ち出した。

 普及がなかなか進まないマイナンバーカードを実質義務化するともとれる方針転換に、関係各所から反発の声が相次いだ。

 翌14日、岸田首相は公明党の山口那津男代表と会談し、10月中にまとめる政府の総合経済対策で、電気料金に加え、ガス料金にも負担軽減策を導入する方針で合意。“ばらまき”を進める一方、原子炉等規制法で定められた原則40年の運転期間の延長を打ち出すなど、「原発回帰」路線が鮮明になっている。電気料金の負担軽減策も「新潟県の柏崎刈羽原発の再稼働が前提」(前出の政府関係者)だという。自民党のベテラン議員は「拙速な動きが目立つのは、岸田首相の焦りの表れだ」とため息をつく。

 とにもかくにも、退路を断った岸田首相。ここで結果を出さなくては、政権瓦解が待っていることは言うまでもない。(本誌・村上新太郎)

週刊朝日  2022年11月4日号