消費者相やデジタル相を兼務する河野太郎氏
消費者相やデジタル相を兼務する河野太郎氏

 首相の頭を特に悩ませているのは、山際大志郎経済再生担当相だ。旧統一教会との深い関係を報道されては、不誠実な態度で認めることを繰り返し、もはや「辞任不可避」(党幹部)との声は党内でも大勢を占めている。山際氏が所属する麻生派では、入閣待機組で当選7回の伊藤信太郎衆院議員が、早くも後任に「内定」(麻生派議員)との観測も。当初はかばっていた首相も、最近は「自ら辞めてほしいと思っている」(官邸関係者)という。(山際氏は10月24日夜に辞職。後任は後藤茂之前厚労相に決まった)。

菅野志桜里氏
菅野志桜里氏

 どん詰まりを打破したい岸田首相が飛びついたのが、今回の「質問権行使」だ。元々は、河野太郎消費者相が旧統一教会の問題を念頭に庁内に設置した有識者検討会の中で、かつて民主党などで舌鋒鋭く政権を批判した弁護士の菅野志桜里氏らが主張したアイデアだ。

 同検討会は17日、「解散命令請求も視野に入れ、質問権を行使する必要がある」との報告書をまとめた。これより前の10月上旬、河野氏は岸田首相や麻生太郎副総裁など政権幹部に質問権行使を説得して回り、納得させたという。ある政権幹部は「山尾(菅野氏の前の姓)が救世主だ。支持率も底を打つ」と、なりふり構わぬ期待を寄せる。

 だが、果たして本当に、これで旧統一教会の問題は解決に向けて動き出すのだろうか。

 前例がないこととあって、文部科学省の宗教法人審議会で質問権行使の基本的な考え方や基準の検討が始まるのはこれから。年内のできるだけ早い時期に教団に調査に入るというが、施設への立ち入りなどに強制力はなく、宗教団体側が回答を拒否したり嘘をついたりしても、ペナルティーは10万円以下の過料のみ。実務を担う文化庁宗務課の定員はわずか8人で、予算は4700万円と、体制としては極めて心もとない。宗教学者の島薗進・東大名誉教授はこう語る。

「文科省の審議会の委員に、教団の教えや実践の特徴をよく理解している人がいるでしょうか。宗教研究者や法学者など、専門的な知識を備え、より強力な調査ができるような委員会を新たに作る必要があると思います」

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