1972年札幌五輪の70メートル級ジャンプで表彰台を独占した「日の丸飛行隊」
1972年札幌五輪の70メートル級ジャンプで表彰台を独占した「日の丸飛行隊」

「札幌の人間は五輪に何の関心もない。現在、招致活動をしていることすら知らない人のほうが多いのでは」(札幌市内のジンギスカン店の店主)

 7月27日、道内の経済団体や競技団体などでつくる「冬季オリンピック・パラリンピック札幌招致期成会」が開いた決起集会では、期成会の岩田圭剛会長(札幌商工会議所会頭)が「個人レベルの支持率向上が急務です。地域一体となって機運醸成を図っていこう」と挨拶した。一方、札幌のライバルであるソルトレークシティーの地元メディアは、7月の世論調査で州民の79%が五輪招致に賛成という結果だったと報じており、招致合戦は一転、混沌としてきた。

 そんな大事な時期に露見した今回の汚職事件。期成会幹部は「最悪のタイミングだ。五輪のイメージがさらに悪化する。高橋氏以外の疑惑、例えば政治家の関与が出るような事態になれば、札幌は終わりだ」と危機感をあらわにした。

 そもそも、本当に札幌五輪は必要なのか。14年11月に五輪招致を表明した上田文雄前札幌市長はこう語る。

「東京五輪に総額1兆4238億円という巨額な大会経費がかかったことや、IOCの金儲け体質が目立ったことなどに、げんなりしている国民がいるのも事実でしょう。しかし、だからこそ今、そうした負の部分を取り除いたオリンピックをやれば、将来の財産に直結するものになると思う」

 確かに1972年大会開催を契機に、札幌市には地下鉄が開通し、地下街や高速道路といったインフラ整備に貢献した。札幌商工会議所副会頭で全日本スキー連盟会長の勝木紀昭氏は、2度目の大会開催のメリットをこう強調する。

「72年大会ではハード面の整備が中心でしたが、2030年大会ではソフト面を重視したいと考えています。前回はまだなかったパラリンピックの開催を機に公共・民間施設のバリアフリー化を実現し、それを入り口に数十年後を見据えた街づくりにつなげたい。スポンサーやIOCなどの拠出する範囲内の予算で大会運営ができれば、その後の経済効果は何十倍にもなります」

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