東尾修
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 西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、投手に転向した中日の根尾昂選手に求められる投げ方について解説する。

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 中日の根尾昂の投手転向が6月は大きな話題になった。大阪桐蔭からプロに入った時は遊撃手として、そして外野も務めた上で、6月21日に登録を投手に変更した。

 私は本当に投手としてやらせるのなら、まずは投手の球を投げられるようになることが先決だと考える。チームとして、来年以降に1軍の戦力として必要とするならば、だ。彼の投球フォームを見ると、右ひじから出てきて、手首が遅れて出てしなりを使えている点は評価できるが、それだけでは、球に力は乗っていかない。打者というのは目が慣れる。150キロ超の直球でも速さや球威を感じないと思えば、対応されてしまう。

 投手で一番大切なことは「内側にため込んだ力を指先に伝える」ということだ。文字で書くと難しく思えるかもしれないから、一つずつ説明する。右投手はまず、右足一本で立つが、この時にしっかりと足の裏に力が伝わらないと、地面の反発力を体にため込めない。「軸足一本でしっかりと立つこと」は、オリックスの山本由伸をはじめ投手がまずは意識することである。続いて左足を踏み出す時には、体の内側、股関節の内側に力をためるように出ていく。つまり、お尻から出ていく感覚かな。その上で左肩の開きをなるべく遅らせる。体の前に出す左ひじを内側から絞るようなイメージかな。そうなれば、最後の右腕の振りはさらに鋭くなる。

 この一連の動きを体に染み込ませないといけない。投げ込みを行うことで、下半身の粘りを出し、歩幅を広げ、もっと捕手に近いところで投げられるようにする。そうすることで、球速は同じ150キロでも力が球に乗る。それを基本とし、あとはどういう投球動作が自分に一番しっくりくるのか。それは人それぞれ違ってくる。どんな球種を投げても同じ動作を繰り返せるかどうか。この作業は一筋縄ではいかない。

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東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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