東尾修
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 西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、ヤクルトの高津臣吾監督のマネジメント力を評価する。

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 今年のプロ野球の交流戦は、ヤクルトが14勝4敗でパ・リーグ全6球団との3連戦を勝ち越すという完全優勝で幕を閉じた。2位に入った阪神も6月に入ってから9勝2敗と追い上げて、12勝6敗。リーグ戦へ期待を抱かせる結果となった。

 セ・リーグが55勝53敗と2年連続で勝ち越して終わったが、ヤクルト、阪神だけが抜けたからこその結果で、ずっとパ・リーグが勝ち越してきた時代から「追いついた」と結論づけることはできない。その中で上位に行った球団は、投手陣がしっかりしていたと思う。

 ヤクルトの高津監督が「リリーフみんながMVPだと思っています」と発言した。たしかに救援陣の活躍は顕著だった。守護神のマクガフは9試合に投げて7セーブ。今野、清水、田口、石山らは防御率0.00だった。7試合で逆転勝ちしたが、救援陣が「次の1点」を与えないから、逆転勝ちが多いのもうなずける。

 投手を含めたディフェンス力があると、投打の信頼関係が生まれてくる。そして先発、救援陣の絆も深まる。同じ1勝でも「粘っていれば、終盤必ず打線が打ってくれる」「勝った状態でリリーフにバトンを渡せば、必ず勝てる」などだ。そういった目に見えない信頼は、指揮官のブレない采配にもつながる。使う側、使われる側、全員が一つにまとまることができる。

「野球が変わった」という点で言えば、2020年からのコロナ禍における出場選手登録数の変更も大きくかかわっている。19年から20年に、出場選手登録数を29人から31人、ベンチ入り選手数を25人から26人に増やした。たかがベンチ入り1人……というかもしれないが、この1人が大きい。その1人は6人もの余剰人員の中から選べる状況である。こうなると選手のやりくりをうまくした球団が上に行く。ベンチ入り25人だったころは、投手は11人ないし、12人編成だった。だが、今は13人、14人という球団も出ている。

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東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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