タイの国民的アーティスト・STAMP。日本語で歌った楽曲も発表している (c)123records
タイの国民的アーティスト・STAMP。日本語で歌った楽曲も発表している (c)123records

 タイのポップミュージック(T-POP)が注目されている。J-POPに影響を受けた世代のアーティストが多いためか、日本人には親しみやすい曲が多いようだ。ラジオDJでタイポップス探検家の山麓園太郎(さんろく・えんたろう)さんに、魅力を聞いた。

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 新型コロナウイルスの感染拡大が始まった2020年、自宅で過ごすことが大幅に増え、配信サービスやYouTubeなどを通して海外ドラマにハマる人が続出した。その一つにタイのBLドラマがあった。日本のファンの間では、16年ごろから注目されていたようだが、20年2月にタイで放送が始まった「2gether」が、日本におけるタイBLブームの火付け役となった。

 あれから2年、今はBLドラマだけでなく、T-POPにもじわじわと関心が広がりつつある。12年からT-POPに注目してきたという山麓さんがこう話す。

「12年に初めて行ったタイでジャケ買いしたCDが素晴らしくて、タイに行くたびにいろんなCDを買っていたらあっという間に400枚を超えてしまいました。その後、僕が地元のラジオ局でかけていたらあちこちからお声がかかるようになりました。僕がハマった当時はまだT-POPと呼ばれていませんでしたが、タイのポップミュージックは洋楽や日本のシティポップを取り入れながら発展してきたのです」

 山麓さんによると、タイでは1990年代にジャパンカルチャーブームが巻き起こり、日本の漫画やアニメが大流行。特にアニメの主題歌から、ZARDなどのJ-POPや、杏里などのシティポップを子どもの頃に聞いていた層が、現在、T-POPの人気アーティストとして活躍している人たちとも重なる30~40代だという。

「90年代のブーム時には、タイの都市部の若者たちが安室奈美恵やSPEED、渋谷系アーティストなどの日本の最新ヒットに親しんでいたそうです」

 日本のシティポップの影響を色濃く受けたアーティストの筆頭が「POLYCAT」だ。2011年にデビューし、現在はボーカルのNa、キーボードのTong、ベースのPure Watanabeの3人で活動している。中でもNaは熱心な邦楽マニアでレコードコレクター。子供の頃にタイで放送されていた「スラムダンク」に夢中になり、同作の主題歌からJ-POPにハマり、さかのぼっていくうちに1970~80年代のシティポップにひかれるようになったという。

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洋楽、J-POP、K-POPと自国の音楽をミックス