──右近は歌舞伎はもとより映画や舞台、バラエティー番組など、活躍が目覚ましい。歌舞伎座でも大役が多くなり、出演が続いている。

 ずっと歌舞伎を求めて役者をやらせていただいてきました。それだけに、これだけ連続で歌舞伎座に出していただくと、「ちょっと歌舞伎に求め始められたかな、相思相愛になり始めたかな」という感覚があります。片思いの時期も長かったので、「歌舞伎もちょっと僕に気があるっぽいぞ」と(笑)。歌舞伎を女性にたとえたら「結婚できるかも!」という感じでしょうか。「あいつに恥じないように男を磨くぞ!」というのが、僕にとっての芸の精進です(笑)。

──5月28日で30歳を迎える。今後は演出をはじめ、いろんなことに挑戦したいと言う。

 役者として確立されていけばいくほど、偏っていく部分もあると思うんです。そうならないように、かき混ぜなければいけない。できないことから逃げたくないし、苦手なことも自分のものにしていきたい。「右近はトータルバランスが最高」と言われたいですね。歌舞伎だけではなく、いろんなバランスが取れている人になりたい。職人を求められた時は職人として光るし、ムードメーカーとなってほしいならとことん盛り上げる。そういった自由に行き来ができる人。歌舞伎で言えば、立役も女方も道化も老けも敵役も全部できるようになりたい。素敵な役者さんがやっている役は全部やりたいんです。とはいえ、まずは30歳のうちに「鏡獅子」をぜひやりたいです!

(聞き手/坂口さゆり)

週刊朝日  2022年5月6・13日合併号