「選ばなかったみち」2月25日からヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国で公開 (c)BRITISH BROADCASTING CORPORATION AND THE BRITISH FILM INSTITUTE AND AP (MOLLY) LTD. 2020
「選ばなかったみち」2月25日からヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国で公開 (c)BRITISH BROADCASTING CORPORATION AND THE BRITISH FILM INSTITUTE AND AP (MOLLY) LTD. 2020

 認知症をテーマにした映画は近年増えているが、サリー・ポッター監督の「選ばなかったみち」は、患者の見ている世界をポエティックに描く異色作だ。今作で若年性認知症を患うレオを演じたスペインの名優ハビエル・バルデム(52)に話を聞いた。

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 バルデムはアカデミー助演男優賞を受賞した「ノーカントリー」(2007年)や007シリーズの悪役など、“怖い男”を演じる印象が強いが「夜になるまえに」(00年)や「BIUTIFUL ビューティフル」(10年)では繊細な男の感性をスクリーンに焼き付けた。今作では過去と現在、心と現実の境界線を失った男を無心に演じる。娘役エル・ファニングとの共演が見どころだ。

──この役を引き受けるにあたり、ポッター監督とはどんな話し合いをしましたか?

「それはたくさんのことを話し合った。最初この役が回ってきたとき、脚本は気に入ったが、当時47歳だった僕に演じられるのか?と思ったんだよ。ところが若年性認知症について調べ、実態を理解すると、老年期のアルツハイマー型認知症とは決定的に異なるということを知った。サリー(・ポッター監督)は、自身の弟が50歳のときに発症したと教えてくれた。弟の心の中を彼女が理解しようとしたのがこの映画であり、その世界に僕らは行くことになったんだ。それは常識にとらわれることもなく、空中のようなところで、そこに彼は生きている。人生でやらなかったこと、やっていたかもしれないことが頭の中で共存するような世界に自分をもっていくことだった。彼女はそうすることで、弟とコネクトできるようになったんだよ」

──あなたの演じる作家レオという人物像、人生をどうやって構築していきましたか?

「サリーとかなりの話し合いをした。レオは作家として成功した。妻に会い、娘モリーも生まれた。だが、彼は自分の人生の夢、芸術のために家族を置いて本を書くためにギリシャへ向かったことがある。そして現在は家族を犠牲にしたことについて後悔している。それが大きくずっしりとレオにのしかかっているんだ」

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