映画を作る上で、ビジュアルイメージを一番はっきりわかっているのは監督だ。でも、映画の場合、設計図にある部品の一つひとつが俳優ともいえるわけで、それぞれが自分の役に対してイメージを持ち寄ることができることを、國村さんは面白がる。

「俳優も、部品の一つでもあり、クリエーターですからね(笑)。僕は、監督のビジョンに対して、自分のイメージをぶつけることが楽しみなんです」

 映画に対する愛情も人一倍だが、「監督をやりたいとは思いませんか?」と聞くと、「今のところは思わないですね」と答えた。

「でも、将来的にはやりたくなるかもわからない。今の若い俳優たちと仕事をすると刺激をもらうんです。斎藤工くんとか、芝居もして、監督もしているじゃないですか。それでいてとてもいいものを作っている。まぁ、事務所の社長に言わせれば、僕は『今が伸び盛り』『まだまだこれから』だそうなので(笑)、今後何をやりたくなるのかは自分でもわかりません」

(菊地陽子、構成/長沢明)

國村隼(くにむら・じゅん)/1955年生まれ。大阪府出身。81年「ガキ帝国」で映画デビュー。国内外の映画を中心に、ドラマ、舞台、ナレーションなど幅広く活躍。初主演作「萌の朱雀」が第50回カンヌ国際映画祭カメラ・ドールを受賞。ナ・ホンジン監督「哭声/コクソン」(2016年)で、第37回青龍映画賞の男優助演賞と人気スター賞の2冠に輝き、同賞での外国人俳優初の快挙となり、注目を集めた。

週刊朝日  2022年2月11日号より抜粋