イラスト/もりいくすお
イラスト/もりいくすお

 急いで降りて「じゃ、お願い!」と喬太郎師匠の声を受け上野へ。雪はまだ降っている。19時45分。再び上野鈴本楽屋入り。今年まだ会っていなかった師匠・一朝に新年の挨拶。今年も一門の新年会が出来なかった。オミクロンめ。

 今日、五席目の高座。お客さんは陽気でよく笑う。大雪や台風など荒れた天気の客席は、一体感があって盛り上がるのだ。「よくこんな日に来ますね(笑)」と言うと、皆「あたぼうよ、こんな日だからこそ来るんだ!」というような満面の笑み。昼のお客さんはちょっと後悔が滲んでたが、夜は開き直りの様子。

 気持ちよく喋って外に出ると雪は止んでいたが、10センチも積もったか。雪の正月もなかなかいいんじゃないですか。

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。新刊書籍『人生のBGMはラジオがちょうどいい』(双葉社)が発売。ぜひご一読を!

週刊朝日  2022年1月28日号

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春風亭一之輔

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/落語家。1978年、千葉県生まれ。得意ネタは初天神、粗忽の釘、笠碁、欠伸指南など。趣味は程をわきまえた飲酒、映画・芝居鑑賞、徒歩による散策、喫茶店めぐり、洗濯。この連載をまとめたエッセー集『いちのすけのまくら』『まくらが来りて笛を吹く』『まくらの森の満開の下』(朝日新聞出版)が絶賛発売中。ぜひ!

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