中国の習近平国家主席
中国の習近平国家主席

 今週の「週刊朝日」(2022年1月21日号)は、パンダ特集号。パンダと聞けば、その愛くるしい姿を想像するだけで幸せになれる。新年早々のお題に最適だ。折しも、1月12日から上野動物園のシャオシャオとレイレイの一般公開が始まる。冒頭3日間の観覧希望者向け抽選は348倍の高倍率。パンダが初めて来た頃、「パンダ外交」という言葉があったが、今もパンダは、日中友好の親善大使として大活躍している。

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 一方、これを帳消しにしているのが、最近の中国政府の行動だ。新疆ウィグルや香港などでの人権問題、南シナ海、台湾海峡や尖閣諸島周辺での軍事的行動、その巨大な経済力を背景とした覇権主義的外交。いずれも世界の人々の不信と恐怖感を煽っている。

 習近平国家主席は、鄧小平氏以来の改革開放路線を放棄して、強権的独裁国家へと歩を進めている。急速な経済成長とそれを基盤とする技術覇権確立への執念は、莫大な軍事支出とともに、世界最強の米国にさえ恐怖心を与える。

 日本は、その「危険な大国」中国に隣接し、経済的にも中国に依存している。安倍政権以来、嫌中政策を続けても、その巨大な経済的引力には逆らえない。米国でさえ、中国依存を断つのは至難の業だ。

 冷静に考えれば、中国は、過去数千年の歴史において、ほぼ一貫して世界の超大国であった。最近の百数十年だけが例外である。少なくとも中国政府は、自分たちが米国と並ぶ大国になるのは歴史の必然だと考えているであろうし、それは、あながち根拠なき妄想だとは言えない。

 だとすれば、その大国とどう向き合うのか。

 日本は米国一辺倒の政策を採るが、その米国は、沖縄を事実上の植民地として、治外法権をいいことにやりたい放題だ。今も沖縄にオミクロン株をばらまき、基地の騒音や米兵の犯罪などで生活を脅かす。世界遺産やんばるの森の自然と環境を破壊しても何のおとがめもなしだ。中東などで戦争を起こすたびに日本に巨額の資金拠出を強要してきた。終戦直前に広島と長崎で原爆の人体実験を行ったことも忘れてはならない。

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古賀茂明

古賀茂明

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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韓国の米中両にらみ戦略