監督 トッド・ヘインズ/17日からTOHOシネマズ シャンテほか全国公開/126分 (c) 2021 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC.
監督 トッド・ヘインズ/17日からTOHOシネマズ シャンテほか全国公開/126分 (c) 2021 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC.

「ハルク」でも有名なラファロが、ある新聞記事を読んで映画化を企画した話題作「ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男」。監督は「エデンより彼方に」などのトッド・ヘインズ。出演はほかに、ロブの妻役で「プラダを着た悪魔」のアン・ハサウェイが脇を固める。

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 1998年、オハイオ州の企業弁護士ロブ・ビロット(マーク・ラファロ)は、見知らぬ中年男からある調査依頼を受ける。ウェストバージニア州で農場を営むその男は、大手化学メーカー、デュポン社の工場からの廃棄物によって、190頭もの牛を病死させられたというのだ。さしたる確信もなく、廃棄物の資料開示を裁判所に求めたロブは、次第に事態の深刻さに気づき始める。デュポンは発がん性のある有害物質の危険性を40年間も隠蔽し、大気中や土壌に垂れ流してきたのだ。

 やがてロブは7万人の住民を原告団とする一大集団訴訟に踏み切る。しかし強大な権力と資金力を誇る巨大企業との法廷闘争は、次第に彼を窮地に陥れていく……。

監督 トッド・ヘインズ/17日からTOHOシネマズ シャンテほか全国公開/126分 (c) 2021 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC.
監督 トッド・ヘインズ/17日からTOHOシネマズ シャンテほか全国公開/126分 (c) 2021 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC.

本作に対する映画評論家らの意見は?(★4つで満点)

■渡辺祥子(映画評論家)

評価:★★★★

牧場主の依頼を適当に考えていたのが超大企業の悪質な現実に直面。告発を決意、決行する過程に覗く無名弁護士の人間的成長にも共感できる。ここに出てくるデュポン、テフロン加工……によって私にも身近な問題になった。

■大場正明(映画評論家)

評価:★★★★

大企業に闘いを挑む一人の弁護士がどれほど犠牲を強いられるのかを、実にリアルに描き出している。デュポン社の内幕には寒気が走る。青系の色調で統一された映像で汚染された世界を暗示するセンスはこの監督ならでは。

■LiLiCo(映画コメンテーター)

評価:★★★★

調べていく過程で明かされるさまざまなこと。まわりが何を言っても続ける。これは人に対する思いやり。スクリーンの悲しい色合いで心が揺らぐ。さすがヘインズ監督。登場人物の数人の名前が明かされたラストも驚いた。

■わたなべりんたろう(映画ライター)

評価:★★★★

ガッツのある映画。現実に環境問題に取り組むラファロの渾身の演技に加えて、ヘインズが社会派ドラマでも演出力をみせる。訴訟を起こされた巨大企業側が陥れようと仕掛けてくるのが、実話ゆえに恐ろしさを増す。

(構成/長沢明[+code])

週刊朝日  2021年12月17日号