善光会が採用した卓上型ロボット
善光会が採用した卓上型ロボット

 人手不足に悩まされる介護分野で、救世主として期待されている技術の一つがセンサーだ。人の目や耳、手の代わりとなり仕事や暮らしを助けてくれる。見守りから排せつのサポート、危険の察知まで、介護の現場で進化する技術を紹介しよう。

【写真】排尿のタイミングを教えてくれる「排せつ予測機器」

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 年を重ねるにつれ、悩まされることが多い排尿や排便のトラブル。何度もトイレに行ったり、間に合わずに漏れてしまったりすることを恐れ、外出や仕事をするのをためらう原因にもなる。

 ところが、「まだ大丈夫」「そろそろ」「出たかも」などと、排尿のタイミングを教えてくれる「排せつ予測機器」がある。ベンチャー企業「トリプル・ダブリュー・ジャパン」(東京都港区)が開発し、4年前から販売する「DFree(ディー・フリー)」だ。

「DFree(ディー・フリー)」 (トリプル・ダブリュー・ジャパン提供)
「DFree(ディー・フリー)」 (トリプル・ダブリュー・ジャパン提供)

 500円玉よりひと回りほど大きい装置を、専用の装着シートで下腹部に貼り付けておくと、スマホなどを通じ、尿がどのくらいたまっているかを10段階で教える。鍵を握るのが、装置内の四つの超音波センサー。上下4方向からそれぞれ超音波を発し、その跳ね返り具合から、ぼうこうの膨らみ具合を測る。ぼうこうは水風船のように伸び縮みする。その大きさや位置を調べることで、たまった尿の量がわかる。

 代表取締役の中西敦士さん(38)は言う。

「ヒントになったのは、超音波で胎児の状態を調べる装置。体に害はないし、仕組みも比較的シンプル。ただし、体格や姿勢、ぼうこうのサイズは人によってさまざま。その違いを、いかに調整して尿の量を測れるかがポイントになります」

 こだわったのは装着のしやすさだという。中西さんは続ける。

「7月に発売した最新版の重さは26グラムで単3電池1本ほど。精度を高める一方、違和感なく装着するには軽量化が必須で、センサーの数を最小限に抑えなければなりません。外部のメーカーと相談して相当な数のセンサーを試したり、配置の仕方を工夫したりと試行錯誤を重ねています」

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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