銃どころか鉛筆さえ持たない人々 古賀茂明

政官財の罪と罰

ジム・ロジャーズ

2021/11/23 07:00

ジム・ロジャーズ氏
ジム・ロジャーズ氏

 2019年9月、米国の著名投資家ジム・ロジャーズさんと対談した。本コラムでも紹介したので覚えている方もおられるだろう。当時、彼は、立て続けに日本経済に関する本を出したこともあり、新聞・雑誌に頻繁に登場していたが、特に注目を集めたのが以下の発言だ。

「私がもし10歳の日本人なら、直ちに日本を去るだろう」

 その理由として、彼は、これだけ借金があり、しかも子供を作らないのだから、日本は50年後か100年後には消えてしまうと述べた。私とジムは、日本が衰退に向かっているという見方で一致し、意気投合した。

 あれから2年。日本経済は、残念なことに私たちが思い描いていた方向に進んでいるが、当時、彼が予想した以上に事態が悪化しているように見えることがある。

 それは、「犯罪大国になる2050年の日本」という不吉な予言だ。

 実は、この言葉は、冒頭で紹介した、10歳の子供なら日本を去るという言葉とセットで語られた懸念だった。彼は、10歳の日本人に対して、日本を去ることの他に、AK―47(自動小銃)を買うという選択肢を提示していたのだ。

 国が破たんに向かうときは、国民の間に、不満、怒り、社会不安が募る。殺人を含め、様々な犯罪が増えるから、護身用の銃が必要になる。ジムは、それを30年後の未来の予測として披露したのだが、事態ははるかに早く進んでいるようだ。

 最近、立て続けに起きた電車の中や駅周辺での無差別テロはその兆候に思えてならない。もちろん、その犯行動機に不明なことが多いが、社会に貧困がはびこり、かなりの数の人々が、自らの居場所を失って日々生きることも困難になっているのは確かだ。

 とりわけ深刻なのは、そうした事態が改善するようには見えないことだ。そうなれば、未来への希望を失い、社会への不満、絶望、恨み、憤りを抑え切れずに殺傷事件に及ぶ人間が増えてもおかしくない。日本は、そうした事態に至るある臨界点を超えつつあるのかもしれない。

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