東儀秀樹さん (撮影/小原雄輝)

 26歳から楽師として宮内庁で働き、10年後に退職した。当時から、雅楽器とピアノやシンセサイザーとコラボレーションしたオリジナル曲を発表し、メディアに取り上げられていた。

「古典が嫌だったから辞めたと思われがちなんだけど、違うんです。僕は、儀式のときは、『誰よりも一番いい演奏をするぞ!』という気持ちでいました。古典こそ誰にも負けないところにいたいと思っていた。でも、もっと対外的に雅楽の良さを広めていきたい気持ちもあって、その意思を貫くには辞めるしかなかった。当時は、『雅楽は集団でやるものだから、ソロ活動なんてありえない』とか、『君がメディアに出ているのは宮内庁職員だからで、辞めたら見向きもされないよ』とか、いろいろ言われました」

(菊地陽子 構成/長沢明)

東儀秀樹(とうぎ・ひでき)/1959年生まれ。東京都出身。幼少期を海外で過ごし、ロック、クラシック、ジャズ等の音楽を吸収。高校卒業後、宮内庁楽部に入り、宮中儀式や皇居での雅楽演奏会、海外公演に参加。96年にアルバムデビュー。蜷川幸雄演出舞台「オイディプス王」で舞台音楽を担当するなど、雅楽器と現代音楽を融合させた独自の音楽活動を展開。最新アルバムは「ヒチリキ・ラプソディ」。

週刊朝日  2021年11月26日号より抜粋

[AERA最新号はこちら]