どうせ原稿を書くために何日も考え続けるわけではない。〆切ギリギリで、取りかかって小一時間で終る。その行為をちょっと時間を早めて、やったに過ぎない。こんなに相手の人がびっくりして、喜んで、感謝されるんだったら、またやっちゃおう。メールで依頼されると、その日か、2、3日の内に書いてしまう。大抵は驚いてくれる。このことは僕にとって一種の快感というかお遊びである。

 最近はこちらが慣れっこになって、相手がびっくりしたり、驚いたりしても、こちらがそれほど反応しなくなって、僕にとっての当り前の日常になってしまった。この往復書簡の連載原稿でも、ずっと先の原稿を2本は書いてしまう。別に編集者の鮎川さんを驚かしたり、喜ばせるためではない。「ただ早くやる」だけのことで、もう慣れっこになって鮎川さんも別に驚きもしない。ただ僕も鮎川さんもこの仕事でストレスにはなっていない。早くやることのメリットは遊びの復権(おおげさ)であり、人間回復(これもおおげさ)であり、何よりも健康のためにいい。すでに今日もこれで2本入稿したことになります。

 なんだったら、もう一本入稿しましょうかね(笑)。

◆瀬戸内寂聴「今回、編集担当の不肖・鮎川が担当します」

 瀬戸内寂聴さんが体調不良で、また秘書の瀬尾まなほさんは、今回どうしても時間が取れないとのことで、担編(編集担当)の不肖・鮎川が担当します。

 瀬戸内寂聴さんはお体が優れないとのことですが、大事をとっての休載ということでご心配なく。瀬戸内さんの文を楽しみにされている読者の方々、もう少しだけお待ちください。

 ここ数回瀬戸内さんのピンチヒッターというより、リリーフとしてご執筆された瀬尾まなほさん、ありがとうございました。瀬戸内さんが日々楽しく生活されている様子がうかがえ、麗しい光景が浮かんできました。

 さて、今回、横尾さんが「鮎川さんも別に驚きもしない」と書いていらっしゃいますが、全くそんなことはなく、驚かされるばかりです。いや、驚きを越して快感ですらあります。

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