中将:実際に身近に接して、沢田さんについてどう思われましたか?

早川:初めて会ったのは渡辺プロの音楽練習場でした。僕が緊張しているのを察したのか「気を遣わないでください」と声をかけられた記憶があります。加瀬君から紹介されて「よろしくお願いします」みたいなごく一般的なやり取りをしただけですが、実際会ってみると普通の青年っぽくってとても感じのいい人だと思いましたね。

中将:沢田さん自身のファッション感覚についてはどう感じましたか?

早川:空手着の一件もあったけど、本質的にはいわゆる硬派という感じの人で、ファッションに対して強いこだわりは無かったんじゃないかな。

中将:初めて手がけられたのは、わかりやすく言うとドラマ「寺内貫太郎一家」で樹木希林さんが「ジュリ~!」と叫んでるポスターの衣装なんですね。

早川:はい、あれはシースルーのブラウスにアルブレヒト・デューラー「天使に王冠を授けられる聖母」の天使の柄をあしらっています。デュ―ラーには天使が物思いにふけっている姿を描いた「メランコリア」という作品があるんですが、中世らしい独特の暗さ、陰鬱さが沢田さんのイメージに重なる気がしました。「沢田さんは必ずしも明るい人じゃなくて、なにか抱えたものがあるんじゃないか」という直感からイメージを広げていったんですね。

 あの衣装には白バージョンもあって、当時の日劇コンサートで着ています。ステージに出てくる時は上から赤黒ストライプの革の上下を着てるんですが、それが分解できるようになっていて、脱いだらヒラヒラのブラウスとジーンズだけになるんです。そしてスタンドマイクを振り回しながら激しいロックナンバーを歌い出す…めちゃくちゃ格好良かったですね。

 あの頃、レッド・ツェッペリンやグランド・ファンク・レイルロードとかいろんな海外のロックバンドを観ましたが、みんなマッチョじゃないですか。沢田さんも同じような曲を歌うんだけど、妖艶というか幻想的というか、体験したことがない種類の魅力を感じたんです。それまで正直「日本のロックなんて」と小馬鹿にしたような気持があったんですが、完全にやられました。

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「沢田さんは仕事に個人的な興味の有無とか私情は挟まない」