映画「空白」は、23日から新宿ピカデリーほか全国公開 (c)2021『空白』製作委員会
映画「空白」は、23日から新宿ピカデリーほか全国公開 (c)2021『空白』製作委員会

「今までやってきた役は、どこかお茶目なところがあったので。後々監督に、『なんでオイラなの?』って聞いたら、『古田さんのこういう役が見たいと思って、ほぼ当て書きです』と言われました」

 吉田監督は最初、主人公の添田は、「パラサイト 半地下の家族」などで主演したソン・ガンホをイメージしていた。「イケメンおじさんとは違うけれど、味があって、どこかセクシーで、迫力があって、何より芝居がうまい。日本人でやるなら古田さんしかいない」と直感したらしい。

「こんなに重い話で、可哀想な人しか出てこないのに、現場はものすごく愉快でした(笑)。監督自身が、感情の切り替えが早い人で、現場でモニターをチェックしながら、テメェで書いたホンで、ボッロボロ泣いているんです。(片岡)礼子ちゃんも、泣きのシーンのあと、『カット』の声がかかったら、パッと泣きやむ。そこからみんなで飲みに行って、バカな話をしてゲラゲラ笑ってた。オイラとしては、すごく健康的な現場でした」

 感情の切り替えが早いのは、「現場に舞台俳優が多かったせいかもしれない」と古田さん。

「舞台やってると、『役を引きずる』とか言ってられない。大竹しのぶさんなんてカーテンコールで涙ボロボロ流して、幕が下りた瞬間に、『裏、うるさい!』と一喝するような人ですからね(笑)」

(菊地陽子 構成/長沢明)

古田新太(ふるた・あらた)/1965年生まれ。兵庫県出身。劇団☆新感線の看板役者。劇団での活動と並行して、外部の舞台、テレビドラマ、映画、バラエティー、雑誌連載など幅広く活躍。主な映画出演作に「木更津キャッツアイ」シリーズ(2003、06年)、「超高速!参勤交代 リターンズ」「土竜の唄 香港狂騒曲」(ともに16年)、「脳天パラダイス」(20年)、「ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~」(21年)など。

>>【後編/古田新太が7年ぶりの主演に「面倒くさい」とこぼすワケ】へ続く

週刊朝日  2021年10月1日号より抜粋