同相談所では、他の相談所の会員も含むプロフィル検索のほか、仲人が会合で会員同士を紹介する「手組(てぐみ)」と呼ばれる方式が中心。対面後、相手を気に入ると「仮交際」へ。この段階は同時並行で他の会員と会ってもいい。デートを重ね気持ちを定めたら1人に絞り「真剣交際」。順調にいけばプロポーズ、そして結婚となる。

 都内の出版社で働く絢子さん(仮名・36歳)も「結婚物語。」を通じ、コロナ禍で結婚を決めた。昨夏に入会し、今年1月、別の相談所に登録していたSEの隼人さん(仮名・43歳)にネット経由で見合いを申し込んだ。当時、仮交際中の相手が3人いた隼人さん。交際人数を増やすことに迷いはあったが、2月上旬、ホテルのラウンジで絢子さんと会った。

「少し前に着くと、絢子さんがちょうどお手洗いから出てきたところで目が合ったんです。彼女のほうからニコッと笑いかけてくれて好印象でした」(隼人さん)

 アニメやマンガの話で盛り上がり、3月上旬に交際を開始。4月下旬には東京タワー近くのチャペル付きレストランで隼人さんがバラの花束を絢子さんに渡し、プロポーズした。隼人さんは車の運転が趣味で、デートも「海ほたるPA」(千葉県木更津市)など関東近郊へのドライブが中心。密を避けられ、2人の距離も縮まったという。

 絢子さんは「真剣交際の前から互いの結婚観について話せた。2カ月という交際期間も短く感じませんでした」。

 IBJメンバーズのカウンセラー、山内節子さんはコロナ禍の婚活では「コロナに対する価値観」が成否を分けやすいと言う。「会う場所や誘い方にその方の人となりが表れる」からだ。4人の共通点はコロナを過度に恐れなかったこと。朝子さんと健吾さんはプロポーズまでの間、自宅デートを含め週に一度は会った。「制限があるならあるなりに、その中でうまくやりくりしようと思っていました」(朝子さん)

 絢子さんと隼人さんも、初対面からプロポーズまで土日のどちらかを必ずデートにあてた。

「仮交際をしていた方に、コロナをとても気にされている方がいました。レストランで食事するだけの状態が約2カ月続き、どこにも出かけられなかった。コロナを気にすることも大切ですが、そこにばかり目が向いていると交際には進みにくいと感じました」(隼人さん)

 コロナは婚活のスタイルをも変えつつある。「制約がある中でいかに動くか」という発想の転換が大切と言えそうだ。(本誌・松岡瑛理)

週刊朝日  2021年7月30日号