こうした現状に、日本が戦争に負けた原因を分析した研究書『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』が注目されている。ジャーナリストの二木啓孝氏は言う。

「この本では、第2次世界大戦とコロナ対策に共通する四つの日本の組織論的問題が指摘されている。(1)縦割り組織の弊害、(2)根拠なき楽観とそれを支える精神論、(3)科学の軽視、(4)始めたらやめられないという考え方。もはや目的はなく、『五輪を開催した』というアリバイ作りに仕事をしているとしか思えません」

 国民性はあるにしても、近年は政治家の無責任ぶりがエスカレートしていないか。二木氏は言う。

「かつては政権が失敗すると自民党内の派閥で政争となり“疑似政権交代”が起きていた。ところが、1994年に衆院で小選挙区制が導入されると、派閥よりも党や官邸の持つ公認権の影響が強くなった。第2次安倍政権以降は国政選挙で圧勝を続けたので、出馬すればほぼ全員当選。以前は大物政治家でも不祥事で落選することがあったが、それもなくなり、自民党内に緊張感が失われました」

 小田嶋氏はその例として、18年に自民党の杉田水脈衆院議員が同性カップルについて「生産性がない」と月刊誌に投稿して問題になったことを挙げる。

「杉田氏は元は日本維新の会に所属していましたが、右派的な言動が安倍氏の目に留まったのか、17年の衆院選で比例中国ブロックの比例単独候補の最上位で公認され、当選しました。問題発言の後も、安倍氏は『まだ若いから』とかばい、処分なし。今も党内で堂々と発言しています。間違ったことをしても、処分されない組織になっている」

 ただ、コロナ禍で相次ぐ無責任発言はさすがに政権への打撃となり、菅内閣の支持率は発足時の65%から33%まで下落(朝日新聞社調査)。すでに政権末期の状態だ。だが、ここで息を吹き返そうとする人がいる。安倍氏の側近は言う。

「菅首相がコケるほど、安倍さんの3度目の首相登板への期待が高まる」

 元祖・無責任男が三たび首相の座に座るのか。それを決めるのは国民だ。今秋までに実施される総選挙で、与野党関係なく無責任な政治家には退場してもらおう。(本誌・西岡千史、松岡瑛理)

週刊朝日  2021年6月25日号より抜粋