分析した同社エグゼクティブ・エコノミストの木内登英さんはこう言う。

「五輪を開催すれば、経済効果があるのは確か。しかし、開催することで感染が広がり、再び緊急事態宣言が発出されるような事態を招くと、マイナスのほうがずっと大きくなる。大事なのは、国民の生命や安全です。開催するかどうかの判断基準に、経済効果を位置づけるべきではない」

 株式市場でも、開催リスクを心配する声が上がっている。りそなアセットマネジメントのチーフ・ストラテジスト、黒瀬浩一さんは「五輪が中止されれば株価にはむしろ好材料」と話す。

「日本企業は今、製造業を中心に業績が回復しています。これから国内のワクチン接種が進めば、旅行や観光需要、個人消費も底入れし、サービス業の業績も回復に向かう。五輪の中止で感染拡大リスクが薄まれば、さらに追い風。日経平均株価は2月に付けたバブル後最高値3万467円に向かって浮上するとみています」

 年末までに3万2千円まで上がると予想する。

 楽天証券の窪田真之さんも、同じ見方だ。

「五輪を開いても、株価への追加的な好影響はありません。むしろ開催への疑問や不満が高まり、上値が抑えられている面もある。これに対し、中止が決まれば、上値を抑えていた不透明要因がなくなる。堅調な米中景気を追い風に、バブル後の最高値超えも視野に入る」

 五輪に伴う負担が減れば、医療資源や資金をコロナ対策に集中でき、国会などの政治日程を動かしやすくなる効果も期待できるという。

 実際、これまでの五輪では、どれくらいの経済効果があったのか。「商業五輪」の皮切りとされる1984年のロサンゼルス以降の夏季五輪9回分について、国際通貨基金(IMF)のデータをもとに開催年前後の開催国の国内総生産(GDP)成長率を調べたところ、開催翌年は米(アトランタ)、英(ロンドン)、ブラジル(リオデジャネイロ)の3回で前年(開催年)の成長率を上回った。

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