田原総一朗・ジャーナリスト (c)朝日新聞社
田原総一朗・ジャーナリスト (c)朝日新聞社
イラスト/ウノ・カマキリ
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 日米韓の3カ国は、北朝鮮の非核化に向けて連携を確認する共同声明を行った。ジャーナリストの田原総一朗氏は、この3カ国の発表に違和感を抱く。

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 4月2日、米東部メリーランド州の米海軍兵学校において、バイデン政権下で初めて多国間の安全保障の会談が対面形式で行われた。日本からは北村滋国家安全保障局長、米国からは国家安全保障担当のジェイク・サリバン大統領補佐官、韓国からは徐薫国家安全保障室長が出席し、北朝鮮の非核化に向けた緊密な連携を確認する共同プレス声明を発表した。

 私は、この共同プレス声明に強い疑問を抱かざるを得なかった。

 米国は当然のことだが、世界最大の核兵器大国である。そして、日本も韓国も、その米国の核の傘で守られている国である。だからこそ、日本は現在54カ国・地域が批准している核兵器禁止条約に参加しなかったわけだ。

 そのような3カ国が、北朝鮮の非核化を求める共同プレス声明を発表するというのは、明らかに大矛盾ではないのか。

 実は、私は米国がイラク攻撃を敢行する2カ月前に、イラクのバグダッドに飛んだ。イラクのフセイン大統領にインタビューをするためであった。

 当時、中東を牛耳っていたフセイン大統領を、米国は何とかして封じ込めようとしていた。そのフセイン大統領が、私のインタビューを承知したのである。

 だが、バグダッドに着くと、フセイン大統領の側近が「申し訳ないが、フセイン大統領には会わせられない」と話した。

 私の行動は米国のCIAが完全につかんでいて、フセイン大統領と会った瞬間に米空軍機に爆撃されるからだという。その代わり、ラマダン副大統領やアジズ副首相にインタビューさせるというのである。

 そこで私は、まずラマダン副大統領にインタビューをすることになった。かっぷくのよい、生真面目そうな人物であった。そのラマダン副大統領が語った。

「米国は、わが国が核兵器を隠し持っていると捉えていて、だから攻撃するのだと強調している。だが、正直に言うと、残念ながら核兵器はまだ開発できていない。そして、そのことを米国は察知している。だから、攻撃するだろう。本当に核兵器を持っていたら、攻撃できないはずだが」

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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