2カ月後に米国はイラクを攻撃して粉砕し、フセイン大統領もラマダン副大統領も処刑された。もっとも、そのことで中東は大混乱に陥るのだが……。

 そして、そのことを知って、北朝鮮は懸命に核開発に取り組むのである。イラクのように米国から粉砕されないために、である。

 現に米国は、核兵器を開発した北朝鮮を攻撃することはできなくなり、当時のトランプ大統領は北朝鮮の金正恩総書記と会談さえしている。米国にとって、北朝鮮は憎悪すべき敵国なのに、である。

 だが、北朝鮮は米国から攻撃されないために核開発をしたのであって、日本や韓国を攻撃するつもりなどはない。

 そのことは日本も韓国も、そして何よりも米国が百も承知しているはずである。

 その米日韓3カ国の安全保障責任者が、北朝鮮の非核化に向けた声明を発表するのは、繰り返しになるが大矛盾であるのに、朝日新聞も毎日新聞も社説で、なぜかこの声明を大肯定しているのである。

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数

週刊朝日  2021年4月23日号

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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