おそらく世界各国の中で、選手を日本に派遣できない国が、いくつか生じるはずである。

 選手を派遣できない国が少なからずあっても、それでも東京オリ・パラは開催することになるのか。

 さらに、選手を日本に派遣できても、自国で選手にPCR検査をできない国も生じるはずである。

 そういう選手を東京オリ・パラに出場させるために、日本政府としてはどうすべきなのか。難しい問題がたくさんある。

 菅首相は、「人類が新型コロナウイルスに勝利したことを示すために、東京オリンピックを開催する」のだと強調している。

 だが、たとえ日本では新型コロナの感染が沈静化しても、世界の国々で沈静化するのは来年以降になるであろう。

 各国で新型コロナの感染が拡大している中で、東京オリ・パラを開催することに、どのような意義があるのだろうか。

 1964年に東京オリンピックが開催できたのは、日本が高度経済成長で経済協力開発機構(OECD)に加盟できて、世界の先進国の仲間になれたことを世界に示し、それを日本人が自覚するためであった。

 猪瀬都知事(当時)は、日本が世界に冠たる先進国で、東京がその中心都市であることを示すためのオリンピックだと強調した。

 だが、現在の東京はその自負を持続できているのだろうか。

週刊朝日  2021年4月2日号

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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