同記録会では、3度目の五輪を狙う27歳の小堀勇気が、男子100メートルバタフライで17年の自己ベストを0秒03更新する51秒66を出しました。200メートルの1分55秒55も13年の日本選手権で優勝したときの1分55秒51以来となる好タイムです。

 ISLのときから「100メートルで記録をあと0秒3、0秒4伸ばすためにどうしたらいいのか」という話をしてきました。陸上トレーニングのやり方を変えたり、スイムでは12月からストローク数を減らす練習を繰り返したりと、スケールの大きな泳ぎを目指してきました。これまで難しくて手をつけていなかったドルフィンキックの改善にも取り組んで、ちょっとずつ速くなってきていました。

 改善点はほんとうに細かいところですが、落ちついて理詰めで考えて、動きを変えてきました。自ら工夫をして練習する姿勢が、チームメートにいい影響を与えています。日本水泳連盟競泳委員で泳法分析が専門のマグナス・シェルベルグ氏は、「Small changes make big difference」(小さな変化が大きな差を生む)とよく言います。

 たしかに、泳ぎの技術や集中力など一つひとつの小さな要素を大切にできるようになると、記録は伸びていきます。ベテラン小堀にいい助言ができるように、私も集中していきます。

(構成/本誌・堀井正明)

平井伯昌(ひらい・のりまさ)/競泳日本代表ヘッドコーチ、日本水泳連盟競泳委員長。1963年生まれ、東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。86年に東京スイミングセンター入社。2013年から東洋大学水泳部監督。同大学法学部教授。『バケる人に育てる──勝負できる人材をつくる50の法則』(朝日新聞出版)など著書多数

週刊朝日  2021年3月26日号

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平井伯昌

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平井伯昌(ひらい・のりまさ)/東京五輪競泳日本代表ヘッドコーチ。1963年生まれ、東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。86年に東京スイミングセンター入社。2013年から東洋大学水泳部監督。同大学法学部教授。『バケる人に育てる』(小社刊)など著書多数

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