緊急事態宣言下の東京・銀座の飲食店街(C)朝日新聞社
緊急事態宣言下の東京・銀座の飲食店街(C)朝日新聞社

 菅義偉首相は3月5日、7日に解除を予定していた首都圏1都3県を対象とする緊急事態宣言を、21日まで2週間延長すると発表した。午後8時までの時短営業を要請されている飲食店にはさらなる打撃となる。東京・銀座の高級クラブ「ル・ジャルダン」の望月明美ママが語る。

「早く宣言を解除してほしいです。大企業勤めのサラリーマンの方々や高齢者のお客様は来なくなった。それ以外の自営業者のお客さんたちで何とか食いつないでいます」

 夜の銀座もネオンが明るいのは午後9時くらいまで。それ以降は以前よりずっと暗く感じる。

「銀座の一流クラブの中でも時短要請に従っているお店もたくさんありますし、従っていないクラブもあります。苦しんでいるお店が多くて、何とかやっていけるところの方が少ないです。お店をまったく開けられないクラブも多くある。午後8時に閉めていることになっている飲食店やスナックの中にも、お客さんの予約が入ればこっそりと店を開けているところもありますよ」(望月ママ)

 別のクラブのママも時短営業はしていないといい、「2月の週末は満卓でした。開いている店が減ったのでお客さんが集中するんです」と話す。

 時短要請を無視する理由は、要請に応じた店に支給される1日1店舗あたり6万円という協力金の額が関係している。望月ママはこう言う。

「うちは4店舗経営していますが、昨年12月の売り上げは4店で約8千万円。協力金を1日24万円、月720万円いただいても家賃分にしかならない。現在も女性75人、男性スタッフも20人弱在籍していて、給料を払わないといけませんから」

 時短要請に従わないという声は、他にも多くの店から聞こえてきた。昨年、クラスター(集団感染)が発生した東京23区内にあるホストクラブの運営スタッフは、店の現状をこう話す。

「うちはホストが50人くらい在籍しているの、6万円の協力金はもらわないつもりです。やれる範囲でコロナ対策をして、営業は午後8時から午前0時半まで通常通り営業しています。お客さんは減りましたが、それでも1日10人から15人は来てくれる。売上が月に200万円とかの店舗だったら午後8時までの営業でも協力金をもらえばまかなえると思いますが、ある程度の売上がある店舗は開けたほうが全然、利益が大きいんです」

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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