「桜を見る会については、大手メディアの記者も取材に行っていたので、本来は赤旗より先に報じることができたはずです。ただ、私たちは安倍政権になってから桜を見る会の支出と招待者数が年々増加していたことを問題視していたので『おかしい』と気付けた。そういった『追及する意志』がスクープにつながったのだと思います」

 赤旗の発行部数は、日刊版と日曜版を合わせて公称100万部。共産党の独自財源の柱となっている赤旗には、地方議員も協力を惜しまない。現在、全国にいる共産党の地方議員は2624人(2月4日現在)。桜を見る会の取材でも、山口県内の地方議員に依頼し、自民党の有力者を紹介してもらったという。

「自民と共産党は議会では政策をめぐり激しく対立していますが、地域では共産党の議員は良識ある自民の保守系議員とは一緒に活動していることも多い。そのつながりから『桜を見る会には後援会の人がたくさん行ってるよ』と教えてもらったんです」(山本編集長)

 編集部が取材の端緒を得て、地方にいる議員に調査協力を頼む。そしてスクープとして世に出した後は、共産党所属の国会議員に議会で質問してもらう。そういった一連の流れが、「桜を見る会」が国政の大問題になる裏側にあった。

 舌鋒鋭い議員の質問の裏にも、組織力がある。共産党関係者は言う。

「国会に提出された法案については各議員の秘書が分担して全条文をチェックする。過去の改正時に問題になったことなども党内の記録で確認し、問題点を洗い出します」

 他の野党では秘書の力を借りず一人で質問を考える議員も多く、重要法案以外は官僚のレクチャー任せにすることもある。精密に築き上げられたこうした仕組みは、他党が真似できない強みだ。

 旧田中派を取材した経験を持つ政治ジャーナリスト・田中良紹氏も、共産党の調査能力をこう評価する。

「共産党は人材と資金を大量に投入して情報収集をしている。金をかけて情報を集め、反権力の旗を掲げていれば、情報が他からも入ってくるようになる。政府・与党内にも現政権をよく思っていない人がたくさんいるからです。マスコミの情報に頼って国会質問をすることが多い他の野党議員とはそこが違う」

 今年で結党99年。日本最古の政党である共産党と、若い政党である立憲との協力は、日本の政治地図を塗り替えるのか。(本誌・西岡千史、上田耕司)

週刊朝日  2021年3月12日号

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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