帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「スピリチュアリティーとは」。

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【霊性】ポイント
(1)スピリチュアリティーとは何なのかは答えに困る
(2)「いのち(霊性)」の部分は死んでもなくならない
(3)「いのち」の広がりがスピリチュアリティーに重要

 少し前の原稿(1月22日号)で私は「スピリチュアリティーに対して謙虚に心を開こう」と書きました。しかし、このスピリチュアリティーとは何なのかと問われると、答えに困るところがあります。その目に見えない領域には一体、何があるのでしょうか。

 ホリスティック医学では、人間を「からだ」「こころ」「いのち」という三つの要素でとらえます。この「いのち」は生命の根源になるエネルギーのことなのですが、そこに単なる生命力だけでない霊的な意味付けをすると、スピリチュアルな世界が開けてきます。

 統合医学のオピニオンリーダー、アンドルー・ワイル博士は「人間は身体性(からだ)・精神性(こころ)・霊性(いのち)という三つの要素からなっている」と言い切り、「生まれる前から存在し、からだが崩壊したのちも存在するもの、それが霊性だ」(『心身自在』上野圭一訳、角川文庫)と説明します。

 つまり、「いのち(霊性)」の部分は死んでもなくならず、そこに来世への展望が生まれてくるわけです。「いのち」はなくならないということは、スピリチュアリティーにとって大事な要素だと思うのですが、もうひとつ重要なことがあると、私は思っています。

 私が1980年に初めて訪れた中国・北京市のがんセンターに辛育令先生という肺がん手術の世界的な権威がいらっしゃいました。辛先生は鍼麻酔(はりますい)のリーダーでもありました。最初に鍼麻酔による開胸手術を見せてもらったときは、度肝を抜かれましたね。手術中の患者さんが私に笑顔で会釈するのですから。辛先生とのお付き合いが続き、数年後に中国で会食したときに、辛先生はこんなことをおっしゃるのです。

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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